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ニッセイアセットマネジメント株式会社様からのご寄附により、2014年度秋学期には、寄附講義「ニッセイアセットマネジメント資産運用論」が提供されました。この講義では、前半パートのテーマを「職業倫理」、後半パートのテーマを「金融法制と資本市場」と題し、ほぼすべて回の授業で、実務の第一線で活躍する方々を講師としてお招きしご講演いただきました。
本日ご紹介するのは、後半パート「金融法制と資本市場」の中で、2014年12月12日にお越しいただいた井口譲二様(ニッセイアセットマネジメント 株式運用部担当部長 チーフ・コーポレート・ガバナンス・オフィサー)によるご講演「スチュワードシップ・コード、ESG、統合報告」についてです。井口様には、大変にお忙しい中を、ご講演の内容や本コースの学生の様子などについて、ご寄稿いただきました。

「スチュワードシップコード、ESG、統合報告」:講演の概要

先日は貴重な機会をいただきありがとうございました。講義では「スチュワードシップコード、ESG、統合報告」というタイトルでお話させていただきました。一見、別々にみえるこの3つの言葉が実は密接に関係していることをお伝えすることができれば、今、運用業界で生じている大きな変革の動きを包括的にご理解していいただけると思ったからです。講義の内容は以下のとおりです。

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昨年2月に、スチュワードシップコードが導入されました。コードに賛同した投資家は、中長期的な投資の視点を持つとともに、建設的な対話を通じ、企業価値創造に貢献する「スチュワードシップ責任」を果たすことが求められます。建設的な対話の場面では企業の経営者の方と1対1でお会いし、投資家として企業価値創造に資する資本市場の声をお届けする必要があります。ただ、この企業価値に資する対話の内容は企業の置かれた状況によって異なります。従って、投資家としては、まず、経営者の方とお会いする前に企業のことをよく知る必要があります。決算数値などの財務情報はもちろんのこと、どのように事業経営をされてきたのか、また、今後、されるのかというガバナンスの問題(G)、環境問題(E)、従業員の方などのステークホルダーとの関係(S)について事前に調査する必要があるのです。このような決算数値などの財務情報ではありませんが、投資(企業価値)に資する情報を非財務情報といいます。また、この非財務情報を、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)というESGの切り口で分析した情報のことをESG情報といいます。最近、よく、金融・投資の世界では、非財務情報やESGといったことが話題になりますが、実は、このような長期投資推進の流れにその遠因があるのです。さらに議論を進めますと、このような非財務情報の重要性の高まりは日本だけではありません。グローバルの現象です。

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当然のことながら、この非財務情報やESG情報は長期の投資判断にも大きな影響を与えます。弊社、ニッセイアセットマネジメントのアナリストの長期業績予想を分析すると、この非財務情報・ESGの要因がその投資判断に大きな影響を与えていると考えられます。
『企業と投資家の対話』の視点が長期化する中、企業から提供していだたく情報や投資家との対話の内容も進化しなければなりません。最近、よく統合報告といったことが言われます。統合報告とは、財務情報とともに、環境や社会、ガバナンスのことを企業価値創造プロセスの中で語ることですが、『企業と投資家の対話』の進化の一形態ということができます。
スチュワードシップコードの時代、投資家と企業との対話はより中長期的になり、この統合的な方向に向かっていくものと考えています。また、統合報告書作成時に必要とされる思考を「統合思考:Integrated thinking」と言いますが、企業における統合思考の浸透は企業価値創造に資するものとも考えています。

講義における学生の方のご様子

企業などで働いている方もたくさんいらっしゃると思いますが、金曜日の夜という遅い時間のスタートだったにもかかわらず、多くの方にご参加いただき、その熱意と意欲の高さに感動いたしました。一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 金融戦略・経営財務コースのHPにあります「入学者に求められる能力」を拝見しますと、『何よりもまず自分の頭で考えて問題解決しようという意識が強いこと、自分の考えを論理的に口頭発表や文章で表現するとともに、他者の考えにもきちんと耳を傾けて意見交換することができるようなコミュニケーションが図れること・・・・』と記されています。
講義の途中、あるいは、講義後に多くのご質問をいただきましたが、その質問内容は、日常業務で考えてらっしゃることと、私の講演内容に基づいた実践的なものでした。また、私の回答に対して、再度、ご質問をいただくなど、実りある議論させていただいたものと考えており、当コースのポリシーが受講者の方々にもしっかり浸透していることを実感いたしました。
このような中、どこまで、受講者の皆様に満足のいく講義ができたかはわかりませんが、私もまた、このような機会をいただけるよう、一層、日本の運用業界の向上に貢献できる調査活動に励もう、と思った次第です。ありがとうございました。

*講演の内容・見解は、講演者の個人のものです。