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演題「企業価値向上」

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———2016年1月26日ゲストスピーカーとして登壇されたのは、株式会社ストライプインターナショナル(旧:株式会社クロスカンパニー)代表取締役社長、石川康晴氏です。ストライプインターナショナルは1999年、従来のセレクトショップからSPAに方向転換されました。earth music&ecologyなどの自社ブランドを立ち上げて大きく成長し、今ではアパレルという事業領域にとどまらず、コスメ、宅配クリーニングなど、ライフスタイル(衣食住)領域へと拡大しています。この講演で、石川氏は会社の歩みと重ねながらリーダーとしての価値観と戦略を語り、今後の針路について述べられました。

※株式会社クロスカンパニーは2016年3月1日、社名を「株式会社ストライプインターナショナル」に変更しました。

 

石川康晴さん プロフィール

1994年、地元岡山にレディスセレクトショップ「CROSS」をオープン、1995年有限会社クロスカンパニー設立。1999年SPAとしてブランドearth music&ecologyを開始。2002年株式会社に。以降数々のブランドを立ち上げながら香港、台湾、中国本土でも事業を開始。また、米国の高級紳士服ブランド「トム ブラウン」への出資や、国内の宅配クリーニング会社「バスケット」の買収など、婦人服にとどまらず多分野に進出する一方、オカヤマアワード創設をはじめ、地元岡山の活性化にも貢献。内閣府男女共同参画局推進連携会議議員。

 

アパレル業界とSPA

kogi2小売業全体を見渡したとき、利益率が高い分野としてドラッグストア系企業や大型スーパーが注目されますが、アパレル産業も利益率が比較的高いことが魅力です。当社では、創立当初はセレクトショップとして欧米からの買い付けを行い、個性的な店舗での販売を行っていましたが、1999年に(自社ブランドを自社で製造販売する)SPAに方向転換したことで利益率が上がり、一気に成長、SPAに転換しなかったら倒産していただろう、と石川氏は淡々と話されます。

 

ノウハウ蓄積・新規分野獲得の軌跡

アメリカのラグジュアリーブランド「トム ブラウン ニューヨーク」への出資

石川氏は、富裕な消費者層の吸収と、ハロッズなどそれまで日系アパレルとしては持ち得なかった欧米の販売チャンネルの獲得を目指し、アメリカの高級ブランドであるトム ブラウンへ出資されました。パリコレに参入するなどして、世界のマーケットに積極的な販促活動を展開、またアジアにおける認知度向上と売上規模拡大にも成功し、業績が大きく伸びました。さらに、同社が従来持っていなかった百貨店とのネットワークを確保することにも成功。さらに、米企業でのビジネスに長けた人材を起用することもできました。

 

キャンの全株式取得

次にアパレル会社、キャンを買収しました。創業50年、オーナー74歳。後継者なし。最近、後継者不足で閉業せざるをえないアパレルメーカーは増えています。同じ顧客層の会社を買収すれば、マーケティング戦略も同様に展開することができ、シナジーを効かせることができます。生産においてもシナジーを発揮し、同社と同一の工場で生産することなどに取り組みました。M&Aの成功の鍵は人です。本来であれば手元に抑えておきたい人材、社長の右腕である専務を、キャンの社長に就任させる決断をしました。明確な戦略をもって臨むことが重要です。

 

バスケット株式会社の買収

2015年度から、ライフスタイル&テクノロジーに事業領域を広げ、新たな企業の買収を実施しました。アパレルに最も不足している人材がエンジニア。ぜひともエンジニアの拡充をしたいと考え、エンジニア人材の確保を目的に創業わずか11ヵ月、まだ決算書すらないバスケット株式会社を2015年に買い取りました。業種は宅配クリーニング業で、起業した松村映子は過去の起業で1度失敗経験がありますが、そのチャレンジ精神を評価してストライプインターナショナルのCTOに登用しました。彼女が加わったことで、エンジニア部門にどんどん人材が集まり、自社のEコマース事業は急成長しました。クリーニング事業による事業拡大だけでなく、会社全体のEC事業の成長も大きなメリットがあったということです。また、今後は宅配クリーニング業も、地域別の精緻なデータを基に積極的にサービスを展開していく予定です。

 

広告宣伝の効果:earth music&ecologyの戦略

 経営を管理する重要な指標(KPI:Key Performance Indicator=重要業績評価指標)を何に据えるか。ストライプインターナショナルでは、KPIは売り上げに限るものではない、として「認知度」に設定しました。そのターゲットは10代後半から30代前半の女性で月1回はファッション用品を購入する層に設定、当時は非常にめずらしかったアパレルブランドのCMを実施し、大々的に宣伝費を投下しました。IT・ゲーム業界は3割近くを宣伝に費やしますが、アパレルのプロモーション・コストはそれほど高くありません。現在earth music&ecologyは十分な認知度を獲得したので、認知度の維持を目標としてCMをつづけています。

 

迅速な決断の重要性:中国大陸での現地法人設立

Up経営者の判断が企業の運命を決める―石川氏は、3秒で経営判断を行うといいます。1ヵ月も検討を要する案件はやらないほうがいい、とも。一番経営者としての判断がためされたのは、中国大陸での事業展開です。韓国や欧米のメーカーが中国の拠点に送る人材は自社の重役クラスですが、日本企業から赴任するのは課長・部長クラスです。競争相手の重役クラスが意思決定するスピードに比して、日本の課長・部長クラスがいかに迅速に意思決定できるかが大きなカギになります。そこで、2011年、石川氏は社長自ら2年間限定で中国に赴任し、年の半分を中国で過ごすことにしました。

中国に進出した日系アパレルは負け続けていましたが、ストライプインターナショナルでは、即決できる人材が中国で活動することによって、中国百貨店の信頼を獲得しました。翌年、日中関係が悪化し、多くの会社が日本に引き上げていましたが、石川氏は中国に残ってさらなる事業展開を進める決断をします。日本での報道だけに依拠せず、現地のマスコミ報道を冷静に把握し、現地の顧客を訪ね、日本企業に対する見解を確かめました。そうして、中国の人々が、日中の政治状況に惑わされずに、引き続き日本製品を購買する意思があるという確信を持ったといいます。最高責任者として現地に赴いていたからこそ、その決断がなされたのです。

その年、石川氏は中国で4店舗開店しました。例年大規模な反日デモがある9月18日( 満州事変の発端となった柳条湖事件発生の日)の2日前である9月16日に、政治の中心地である北京で開店することはさすがに不安もありましたが、百貨店のサポートもあり、結局記録的な売り上げを出し、大きな自信となりました。これまで、多くの日系アパレルが中国から撤退した中、現在では75店舗出店しているとのことです。

 

展開と撤退の基準:KOEブランドの展開

今後、目指すのは、ZARA、H&M、GAP、そしてユニクロに負けない国際戦略ブランドを作ることです。それを叶えるべく2014年9月に自社ブランド「KOE(コエ)」を立ち上げ、まずは日本の岡山市から店舗展開をスタートしました。リスクマネーを50億円と設定し、この金額の赤字となるまでは、積極的な販売戦略を打っていくそうです。16年秋には自由が丘に旗艦店を出店し、20年頃には海外展開する予定で、引き続き、果敢にチャレンジします。

一方、これまでに廃止したブランドもあり、撤退基準に則った「逃げ足の速さ」も大切にしているのだそうです。日本のアパレル業界は間違いなく斜陽産業であり、百貨店の衰退とともに減退しています。そんな産業では少しの戦略のずれが命取りです。入念な事業戦略が必要で、その一環としてしっかりした事業からの撤退基準を設定しています。

 

Lifestyle&Technology領域での事業展開

Technologyを活用した事業としてファッションレンタルアプリを始めました。日常着のレンタルという今までなかった事業です。事前に市場調査をしたところ、10代の女性にはCDを1枚も購入していない人がいることを知り、所有から共有への価値観の転換を感じて実行に踏み切ったということです(月5800円借り放題)。同時に、レンタルサービスで返却される、比較的新しいユーズドの商品の販売を自社のサイトで始めました。将来的には、大きな市場となると考えています。

 

20年来こだわってきた全正社員制度の廃止

kougi20年の間、同社で働く人はすべで正社員として雇用しました。「人こそ財産」との信念から、石川氏自身がこだわってきたことです。しかし、2015年に全正社員制度を廃止し、非正規雇用も開始。アルバイトとして働きたい人材を受け入れると同時に、就職を控えた学生が体験入社できるようにしました。これは、コストダウンのためでなく、現代社会の人材調達に適合させるための制度改変です。自分の決定を破壊するのもリーダーの責務です。

このような方針転換をしたのは、以前、専門学校生と、就職に関する座談会を開き、彼らが、インターネットなどで公開されている情報と、就職セミナーなどで説明される内容の違いに戸惑っていることを知ったからです。そこで、いきなりすべての人を正社員として雇うのではなく、まずは、アルバイトとして会社のことを知ってもらう機会を設けることにしたのです。現在は、正社員が8割、アルバイトが2割で、アルバイトスタッフからの社員登用も始まっています。

 

社会貢献型企業へ

女性の働きやすい職場を作る

石川氏は、男女共同参画推進連携会議の議員として女性のエンパワーメントを強く訴えています。

earth music&ecology事業部では、30代の企画の女性が600億円の発注指揮の最終決裁権をもったり、30代の宣伝部部長の女性がCM宣伝の決定も行っています。実力のある女性がいるから管理職に登用するうちに自然に増えただけのこと。婦人服だから女性というだけでなく、冷静に必要な人材を見極め、女性が安心して働ける職場にしないと女性管理職は増えないとの石川氏の信念によるものです。同社では4時間から6時間の短時間勤務制度があり、産休後には短時間勤務の正社員として復帰できます。全体の15%が短時間勤務の社員ですが、スムーズに稼働しているそうです。社長や専務が率先して定時に退社し、トップが徹底して、残業のない社風を作り上げます。遅くまで残業をしている男性管理職を見たら、多くの女性はその職場でのキャリアアップを望まないのではないか、とズバリとおっしゃいます。

 

地域創生を使命に

経営者として成功した人は、ぜひ社会貢献をしてほしい――これが、石川氏が最後に語られたメッセージでした。今年東証一部上場を目指していますが、地元企業として、岡山の教育・芸術・スポーツ事業へ貢献するという方針を掲げています。

2010年にオカヤマアワードを創設したのは、岡山の起業や雇用の促進が目的でした。また、「経済で成功した者は文化人を応援すべき」という信条を持ち、現代アート作品のコレクターとして約160作品を蒐集しました。これらの作品も活用しながら岡山県・岡山市などとともに岡山でアートイベントを行い、瀬戸内国際芸術祭とも連動して交流人口を増やしたいとのとこです。また、岡山でのマラソンのスポンサーをしているのも、交流人口増加や将来的な定住促進へつなげるためです。このように、具体的なビジョンをもって、地方創生に貢献しています。